3月に読んだ本(殺人鬼・予防接種・西洋史・グローバル)
読んだという備忘録。
1.亜紀書房 - 亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズⅢ-9 黄金州の殺人鬼 凶悪犯を追いつめた執念の捜査録
「つけびの村」 というnoteを途中まで読んでほったらかしているのだが、その著者である高橋ユキがTwitterでずっと推していたので、どんなもんかととりあえず買って読んでみた。シチズン・サイエンスってここまでやれるのかとか、2chの特定班ってこういうやつらなんだろうな、と自分の関心に引き付けたときの面白さはあるんだけど、読者である僕自身はマクナマラほどにはこの殺人鬼の像がはっきりみえなくて、そこまでハマらなかった。色んな記事を集めて再構成したということで、話の流れもかなりぐにゃぐにゃと行きつ戻りつする感じがあって、結構困惑した(途中からめんどくさくなって止まることもなくなったが)。ページが止まらないというよりは、買ったからもったいないし……みたいな意地とか義務感で読んでる感じになってしまった。最終版の方では「お、ついに捕まるのか?」みたいな期待感で盛り返してするするっと読めた。普通。
2.『独ソ戦』(大木毅. 2019. 岩波新赤1785)
『失敗の本質』に雰囲気はかなり似てる。ドイツもソ連もそれなりにお粗末な面はあったんだなぁということがわかった。なんというか、結局のところ、どうせ失敗はするんだし、お粗末さが致命傷にならない武運こそ、戦場では一番大事なんだろうなという」感想を抱く。成功はいらなくて、失敗の数を減らすことが勝利の近道なのかもしれないというかなんというか。ミリタリーの細かい話はあんまりわからないですね。わかればもっと深い感想が出ると思います。
3.『2100年の世界地図 アフラシアの時代』(峯陽一. 2019. 新赤版1788)
アフリカとユーラシアの二つの大陸をまとめて、「アフラシア」と呼んで、そこにもっと目を向けた方がいいですよ、というのがこの本の要点だったと思う。ファクトフルネスの熱量をもっとそぎ落としてDemogrpahyに振り切った感じ。こういう地域区分でいうと、興亡の世界史シリーズで杉山正明が書いた『モンゴル帝国と長いその後』が思い出される。モンゴル帝国ではじめてアフリカ~ユーラシアがつながって、アフロ=ユーラシアのゆるやかなつながりが生まれた、みたいな見解だった。杉山先生のこの本はすごく面白いのでおすすめ。浪人したころに読んで、「やっぱ京大に行きたいな~」と思ったきっかけの一冊でもある。
4.『奴隷船の世界史』(布留川正博. 2019. 岩波赤版1789 )
奴隷に関するデータベースが充実したことで、詳細な研究ができるようになった。その知見を色々紹介してくれた新書。結構面白かった。奴隷船の状況のひどさとかはまぁな何となくわかってたけど、体験記みたいなのを読むと、想像を超えてくる凄惨さでした。奴隷の反逆を抑え込むためのシステムが本当に上手くできている。
この本を読んで改めて思ったのは、「やる夫と金糸雀で学べるかもしれない三角貿易」ってやっぱり傑作のスレだったな、ということだった。あのときの記憶が色々蘇ってきた。高校生の頃に読んだけど、あの著者のやる夫スレは本当に傑作ばかりだった。18c~19cあたりのイギリス労働者の生活とかのスレも作ってたと思う。
5.『アイロニーはなぜ伝わるのか』(木原善彦. 2020. 光文社新書)
こちらは前回書いたので割愛。いい本ですよ。
6.ワクチンは怖くない 岩田健太郎 | 光文社新書 | 光文社
7.「感染症パニック」を防げ! 岩田健太郎 | 光文社新書 | 光文社
8.予防接種は「効く」のか? 岩田健太郎 | 光文社新書 | 光文社
岩田健太郎の本をとりあえず読んでおいた。マスコミはともかく、厚労省には親でも殺されたんだろうか。とにかく憎い様子がひしひしと伝わってくる。行間を読む才能の無い僕でも感じる。6と8はテーマとして取り上げるワクチンが違うので、予防接種に関して興味を抱いているのなら、結局2冊は読んだ方がいいということになる。7はどっちかというと医療従事者かその周辺に関心が寄ってるかな。そういう意味では実用書っぽい。これらの3冊を総じていえば、「人によってはお勧めするかな」というレベル。読書体験としてすごい楽しいとか知的好奇心がかきたてられるとか、そういうことはあんまり(僕は)感じなかったので、万人にすすめるほどではないかなー、と。まぁ、読んで損になることも書いてないですしわかりやすいですけどね。