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イニシャルHの研究

8月から10月に読んだ本のメモその1(ルドゥレダ、島田雅彦、エッセー、ユニクロ)

こういうのって1冊1冊分けて書けばいいんだろうな。まぁいいけど。

 

ほんとはSAGEから出てるHealth Geographyの本とかグラハム・ムーンとかのHealth Ineuqalitiesについての書籍とか和訳とかやりたかったけど、8月9月がとにかく忙しくてリカバリーできずにそのままタイムリミットになっちゃった感じ。うーん。こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。

 

1.ダイヤモンド広場( マルセー・ルドゥレダ 作 , 田澤 耕 訳,岩波書店

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Twitter見なおしたら9月13日に読了したらしい。「ダイヤモンド広場、中盤まで辛抱して読んでいたらかなりグッとくる展開になってきた。これはおすすめできる。すげー不思議なんだけどとても良い。どことなく映画っぽい。おすすめ。」とか書いてた。
 冒頭から途中まではほんっとどうでもいいような細かい描写となんかどうしようもない男(夫)にイライライライライライラしてる女の心理とで全然話進まないなぁ、太陽の明るさなんて全然なくて、黴臭くてじめじめした雰囲気がずっと漂っていた。とにかく内面的で半径数メートルの世界に終始していて「あーこれは相性悪いかもなぁ」とか思いつつ、でもなんとなく捨てきれなくて読んでた感じ。それが、スペイン内戦で夫が出兵したあたりから話の加速度が急に上がってきて、暗く長いトンネルをすっと抜けて光り輝く美しい物語の世界に入りこんでいった。心理的なハードさよりも物質的なハードさがどんどん苛烈になっていって、余白の失われた生活の過酷さが、今まで見えてこなかった主人公の育んでいた家族への愛の深さと生きる力を鮮烈に輝かせた。心のとげは刺さったきりで抜けないし、過去の後悔や自分がとらなかった選択のIFのフラッシュバックはいつでもあるし、喪失は代わりの何かで埋まるとは限らない。それでも人は生きていかなくちゃいけないし、それを漠然とでも認識して人は生きていくし、その道のりのなかでいくつもの命は受け継がれていく。それはすごく美しいことだなと。テーマは普遍的だけど、唯一無二の輝きを放つ、素晴らしい小説でした。

 

2.『ミイラになるまで 島田雅彦初期短篇集』(島田 雅彦):講談社文芸文庫|講談社BOOK倶楽部

 

島田雅彦は『彼岸先生』を読んだことがあるのかな。登場人物の女の人が性癖に刺さったことを覚えている。あれも変な小説だったけど、これも変な小説ばっかり集まってた。表題作のミイラになるまでは即身仏日記みたいな感じでよかった。あれどういう精神状態というか、どういう状況に自分を追い込んで書くんだろう。想像であんな感じで書けるものなのだろうか。性描写がきっちりした筒井康隆みたいな感じだと思うけど、読んでると電気グルーヴが頭でかかる。聖アカヒト伝だったかな。MUD EBISがずっと頭に流れてました。

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3.たいした問題じゃないが(行方 昭夫 編訳, 岩波書店

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ガードナー,ルーカス,リンド,ミルンの4人のエッセーをまとめた一冊。4人目のミルンはクマのプーさんの作者でおなじみのミルンとのこと。当時の時代背景が要求されるかと思ったが、「慣れた動作は無意識にやってるけど、あれって途中で止めたり作業手順を意識の俎上に載せると急にできなくなることがありますよね。例えば、時計を忘れたと思って駅でそわそわしだして、あー取りに帰る時間はあるかなぁなんてことを確認するために、懐の懐中時計を取り出した。なんてことが……」みたいな話が多くて、あんまりそういうことは気にせず楽しく読めた。もちろん「イギリスっぽさ」を感じさせるジョークも色々ある。英語のスペルミスから始まる職業差別をネタにしたお話なんてとにかくひどい。ひどいけど面白い。本棚において、ふとしたときに一節だけ読んで寝る、みたいなのが良さげな一冊。

 

4.文春文庫『ユニクロ潜入一年』横田増生 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS

週刊文春で初回だけ読んだことがあって、「あれどうなったのかなー」と思ったら書籍化されていたので読んだという話。ユニクロ帝国の光と影についての書評で山形浩生が指摘していたように、この本も結局はユニクロがどういう点ですごいのかをよく表してる本になっている。CSRは企業の稼ぐための戦略だとか、会社の危機を煽っては新しい方針を進めていく、だとかは筆者ほどに違和感として抱くことでもないよなと。途中に組み込まれていた東南アジアの製造工場のネタについての現地取材がメーンになった方がもう少し面白くなったんじゃないかなぁと思う。そのへんは『あなたのTシャツはどこから来たのか?』 でも大雑把には既にふれられているけど、日本のセレクトショップや商社との関係に絞って色々話を聞いてほしかったなーと。今年のアーバンリサーチの件とかも、表には出てないだけで似たような話がこのころには既にあったのではと思うし、その辺突っついてわかりやすく解説してくれる書籍は今でも需要あるんじゃないのか……とここまで書いて、『アパレル興亡』(黒木亮, 岩波書店)でそういうところ触れてるかもしれないなと思いだしたので、とりあえず次回リストに入れてます。

 個人的にはバイトの外国人比率が店舗によって全然違うとか、立地によって売り上げが全然違う点(幕張と豊洲)とかをさらっと書いてたけど、そのあたりがすごい面白かったです。幕張新都心の店舗はSCの中でもさらにへき地にあって施設内でのアクセシビリティが悪いらしい。なるほどなー。

 

川上弘美の『蛇を踏む』とかも読んだなそういえば。えー、普通に蛇と生活しちゃうんだ。あまりにも平然としてるからこっちの感覚がおかしいのだろうかと戸惑ってしまう。内容あやふやなんだけど、最後に載ってた中編が結構好きだった。

それにしても小さいスケールの舞台設定のなかで異世界に日常から接続してく感じの話って海外文学ではあんまり見ないけど、やっぱり輸入物でそういう小さいテーマはウケないのかな。日本だと。

 

後半はもうちょいかっちりしたやつ。
不動産投資市場、動物と心理学、事実と感情、ミシンと消費者、政策廃止。