Like a notebook

イニシャルHの研究

京大野球部の本を読んだ話

www.kadokawa.co.jp 洋画の捻りすぎた邦訳タイトルみたいに長い書名だけど、面白かった。内容の大筋としては、コロナ前からコロナ禍中の京大野球部がリーグ戦の優勝(勝ち点をとる、とかではない)という目標に挑戦する様子を、個々の選手、監督、アナリスト…

近況(5/29)

最近読み終わった本 ・『現代ロシアの軍事戦略』(小泉悠、ちくま新書) www.chikumashobo.co.jp これは非常に良かった。従来型の軍事行動を伴う戦争以外にも、戦争の手段は沢山ありますよ~という入り口からまず面白かった。とはいえ、最後に必ず必要になる…

映画「マイスモールランド」について

別のところに掲載していた映画の感想。属性柄かあんまり受けなかったのでこちらに。 映画『マイスモールランド』オフィシャルサイト ずっとここに居られると思ってた ここで、たくさんの人に出会って学んでほんのすこし恋をした―― /嵐 莉菜 奥平大兼 監督・…

1年目のあれこれ

某所用の原稿を一部切り取った。 現状で言うと、全くもって冴えない営業職という体たらくである。売り上げのほとんどは営業以外の得体のしれない業務から得ている、名ばかり営業職なのだ。とはいえ、有給も休暇も幾度となく失い、残業も沢山積み重ねた結果の…

20211231_今年の備忘録

なんか色々あってここに。 ーー 今年は概ね楽しかったです。ただ、自分で書いておきながら、「概ね」って何?いったい、何が足りなかったの?という疑問も湧いています。 そこで、よくよく考えると、僕の充足感というものには、楽しさだけでは充たされないも…

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体調不良も明けて長らく経った。今年を振り返るころ合いとなりつつあるが、結局は今の仕事の本筋で具体的な成果は上がらない一年だった。どちらかといえば、前職でのなじみ深い作業が数少ない成果のほとんどすべてであり、来年もおそらくそうなっていくこと…

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かの偉大なるジョブス御大によって広まった「今日が人生最後の日なら、あなたはどう過ごすか?」という質問をこの頃思い出す。若いころにはその内面的な意味を深読みしては、「はぁ真面目に今日も生きねばならぬのだ」、「私は昨日なぜ怠けたのだろうか」等…

「アイダよ、何処へ」の感想

「アイダよ、何処へ」 どことなく不思議な温度感があって、コメントを難しくさせる作品だと感じた。アイダは常に紛争そのものに加えて、国連の無力さやセルビア軍の野蛮さに対する怒りを抱えていた。そのいずれかは作品の要素として、物語に何か筋を通してい…

消えた実家と、どこにもない実家

母親から、荷物――小包と呼ぶにはあまりに大きすぎるし、贈り物と呼ぶには素朴すぎる外観の――段ボール箱が4つ届いた。内容物は全て「書籍」と記されていた。ガムテープの端を爪先で持ち上げて、腕を目いっぱい伸ばして荷解きを始める。そういうことを都合四回…

女のいない男たち、トムボーイ、プロミシング・ヤング・ウーマン

先週観た「ドライブ・マイ・カー」がかなり良くて、今週の日常生活の間にも余韻がちりばめられてしまって、中々な悩みとなっていた。 そういうわけで、この映画の原作となった短編集を読んだ。 女のいない男たち(村上春樹、2016、文春文庫) 映画に該当する…

「ドライブ・マイ・カー」を観た

「ドライブ・マイ・カー」を観た。とても良かった。 youtu.be あまり事前に情報を入れずに見ていたので、エンドロールになってようやく、村上春樹原作だと知った。言われてみると確かに、「僕」という一人称に、やけに多い性描写、文芸らしさを感じさせる少…

道半ばの読書記録たち①

途中までは読んでいるけど、最後までは読み切っていない本の備忘録。こういうのをかいておくと、後から便利。それだけの話。 ・アパレル興亡(黒木亮, 2020, 岩波書店) 本当にありそうなアパレルメーカーの歴史を記した小説、という体をとっているが、その…

いつか別れるその日まで

ガールフレンドの話ではない。資本主義に脳髄まで毒された今の僕が絵空事を紡いでも大したモノは書けないだろう。そうではなくて、僕の祖母の話だ。 週の頭だというのに21時を回ろうかという時間に退社した。半日後にはまたこの場所に戻ってくるのか、と大変…

そもそもデザイナーって

前回に引き続き、勉強がてら図書館で背表紙で関心を抱いた本を好き勝手に読んだりしている。 1. そもそもをデザインする 「そもそもデザイナーって、普段どうやって仕事してるんだろ」みたいなことをちょっと前から気にするようになっていた。この前、イラス…

庭園は儚い

週末は隣の隣町ぐらいのところにある、かなり大きな図書館で勉強をしている。ただ、自習だけで座席をとるのは規則上でも精神衛生上でもあまりよろしくないものなので、とりあえず座った座席の近くで一冊本を取る。飽きたらたまに読んでみて、また勉強をする…

サンキューぐらいは大声で。

言える人になりたいですよね、というだけの話です。 ーーーー 世の人々は大なり小なり、人生における目標を用意して生きているのだと思う。そしてその多くの目標は、年度ないし年ごとの人生目標みたいなものをおったてるものであって、そこに向かって人々は…

「サマーフィルムにのって」を見た

「サマーフィルムにのって」をようやく見たんですけど、前評判に違わず良い作品でした。のめり込んで青春の眩しさを全身に浴びてもいいし、一歩引いて突拍子の無さと過去の名作の引用にニヤニヤしてもいい感じだなと。色んなテーマやオマージュっぽい流れが…

「愛が世界を救います(ただし屁が出ます)」感想

stage.parco.jp これの感想です。当日券がまだあるのかは不明。 前書き コロナが広がる随分前から、僕たちの世界には録音された音楽が沢山あふれていた。それでも、ライブは当たり前のように日常に溶け込んでいた。非日常の空間で観客としての私たちが熱狂す…

「バックコーラスの歌姫たち」所感

「バックコーラスの歌姫たち」を京都みなみ会館で見た。2013年に公開された当時から足掛け8年近くの積み残し(積劇とでも言えばいいのか?)の映画作品を、今さらになって解消できるとは思わなかった。長く生きていれば、いいこともあるということかもしれな…

ポール・オースター『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』を読みながら

3月に読んだのはデジタル罠、ロシア絵本(1930s)、音楽の危機、椿井文書、セイバー罠、経済政策で人は死ぬか、日本の地方議会、日本の地方政府、ファンソ(東声会)、川喜田壮太郎の旅行記あたり。この辺もメモ書きを拾ってこないといけない。図書館が再開…

タイトル未定(進路について聞かれたときのあれこれver2020)

今月中にこういう話を内向けの文書で書く必要があるのと、最近になってこういう話を年下にする機会があったのでここに書いておく。だいぶ前にも一度書いたこともあるけど、当時の記事のリンクを失った。 ・・・ 大学院に入る前も就職活動はしていた。そのと…

2021年1月に読んだ本(ブラックストーン、嘘の世界史、動物の物語など)

論文が片付いたタイミングで読書を再開した。感想をためても書けないので随時書き出すのがいいと気づいたので、試験的にTwitterであれこれメモを残すようにした。 1.『内なる町から来た話』 (ショーン・タン 著, 岸本佐知子 訳, 224ページ ISBN:978-4-30…

8月から10月に読んだ本のメモその1(ルドゥレダ、島田雅彦、エッセー、ユニクロ)

こういうのって1冊1冊分けて書けばいいんだろうな。まぁいいけど。 ほんとはSAGEから出てるHealth Geographyの本とかグラハム・ムーンとかのHealth Ineuqalitiesについての書籍とか和訳とかやりたかったけど、8月9月がとにかく忙しくてリカバリーできずにそ…

3月に読んだ本(殺人鬼・予防接種・西洋史・グローバル)

読んだという備忘録。 1.亜紀書房 - 亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズⅢ-9 黄金州の殺人鬼 凶悪犯を追いつめた執念の捜査録 黄金州の殺人鬼――凶悪犯を追いつめた執念の捜査録 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-9) 作者:ミシェル・マクナ…

木原『アイロニーはなぜ伝わるのか?』(2020, 光文社):語用論から皮肉の仕組みを考える

今月は10冊程度読んだのだけど、その中でも特に面白かった本のメモをここに残しておく。 はじめに アイロニーはなぜ伝わるのか? 木原善彦 | 光文社新書 | 光文社(2020年1月16日発売) アイロニーはなぜ伝わるのか? (光文社新書) 作者:木原善彦 発売日: 202…

フィスマン and ゴールデン『コラプション』:汚職の経済学の知見をわかりやすく紹介。

コラプション:なぜ汚職はおこるのか (レイ・フィスマン,ミリアム・A・ゴールデン著.山形浩生,守岡桜訳.慶應義塾大学出版会.2019.) www.keio-up.co.jp この本との出会い 神保町か神田の、本屋とカフェが併設されている店で平積みにされていて、山形…

『ファクトフルネス』とアカデミアとロスリングについて考えたこと

前回までは、『ファクトフルネス』と『私はこうして世界を理解できるようになった』の内容を簡単にまとめて、少し感想を述べた。 今回は、これらの書籍に対して、その他の書評がどのように評価したのかを少しだけ紹介する。そして、nature誌に掲載されたハン…

ロスリング and ヘルエスタム『私はこうして世界を理解できるようになった』:『ファクトフルネスより』面白いかも。

前書き 前回(↓)は『ファクトフルネス』の感想でした。 chanma2n.hatenablog.com 今回はハンス・ロスリングの伝記である『私はこうして世界を理解できるようになった』(ハンス・ロスリング,ファニー・ヘルエスタム 著,枇谷玲子 訳.2019.青土社)の概要…

ロスリングら『ファクトフルネス』: 冷静なデータ分析は熱い情熱から生まれる

前書き 最近、ハンス・ロスリングらによる『FACTFULNESS』と、彼の伝記である『私はこうして世界を理解できるようになった』を読みました。この2冊の内容紹介をしながら、多少感想を書きました。 分量の都合で、3つの記事に分けて、公開します。今回はファク…

2019年8~9月に読んだ本(一般書など)

備忘録です。 9月は本当に何をしてたんだろうというくらい、全然なにも読めなかったな。しょうもない(というのはよくないが)試験の対策とか論文をいくつか読んだぐらいかなー。移動中に鷺沢萠の小説を読みかけたぐらいか。 一般書 8月 人間の本性を考える…